2008年07月10日



父が去った日

77歳の父が他界した。真面目に懸命に自分の人生を終えた。

これといった趣味もなく、定年を迎えてからはあまり人生を謳歌しているとは思えなかった。

母を先に亡くし、それから一段と気力が萎えたようだ。
男は弱い。特に自分の伴侶を先に亡くすと男性は気力を失うようだ。

母を亡くしてから、全く競馬をしなくなった。
競馬新聞さえ読まなくなってしまい、馬券を買うこともなくなった。

なくなる2週間ほど前、病院のベッドで俺にささやいた。
「充分生きたよ。満足はしてないけれど、これでいいと思う。」
「もういいだろう。お前に苦労かけるしな。」
俺は言葉を捜しているうちに、オヤジは眠ってしまった。
これが、父の声を聞いた最後だった。

延命処置はしなかった。イタヅラに人の命を左右したくなかった。
そして苦しむのを見たくなかった。

「充分生きた」そう最後に言った父を安らかに逝かせたかったのだ。

両親を失った。親はもういない。

俺の人生をどう終わらせるか?

「充分生きた」と俺は最後にいえるだろうか?

普通の父親で普通の人生を普通に終えた。

偉大さはない。しかし、最高の父親だった。


病院のベッドの横で眠って起きない父親に俺は言った。

「お疲れさま」
posted by juran

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